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東京西郊に細長くのびる多摩丘陵、またの名を“多摩の横山”。

ここにはほんの50年前まで、長閑な田園風景が広がっていた。

明治、大正と時代が過ぎ、郊外の各地で開発が始まってもなお、

未だ変わらない里山の姿がそこにはあった。

 

しかし押し寄せる時代の波は、都心に程近いこの地が

片田舎のままでいることを許さなかった。高度経済成長期以降の

膨れ上がる住宅需要とともに、野山は切り開かれて田畑は埋められ、

瞬く間に住宅団地へと姿を変えたのである。

狸や狐といった古くからの野生動物は突如として住処を追われ、

一方で移り住んだ人々の新たな生活がこの地に根付いていった。

 

日暮れ時。かつて小川の上を蛍が飛び交ったであろう谷戸に、

今は暮らしの灯が一面にともりだす。

移ろい行く風景の中を駆け抜ける、小さな電車の物語。

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